クリップ
概要
ー クリップ 1 出演者のみなさん 認知症とのかかわり ー
2012年10月、埼玉県で認知症フォーラムが開催されました。初めに、認知症対策の第一線で活躍する3人のパネリストたちが、自己紹介を兼ねて認知症とのかかわりについて語りました。25年ほど前から認知症の患者さんを診療してきた医師の大場敏明さんは、医療が目覚ましく進歩していることを報告。現在は進行を遅くする薬も登場し、自宅で生活することも可能になっていると話しました。地域包括支援センターの管理者をつとめる松本由美子さんは「介護も変わってきている」と指摘。近年は本人の思いを大事にしたケアが導入されつつあるといいます。若年性認知症の妻の介護を続けている宮田敏行さんは、介護を始めたころの戸惑いなど、自身の体験を語ってくれました。(3:35)
ー クリップ 2 認知症の種類と症状 ー
認知症を早期発見には、日ごろからその症状や特徴を正しく理解しておくことが不可欠です。最も気づきやすい症状のひとつが「もの忘れ」ですが、認知症のもの忘れは、年のせいによる自然なもの忘れとは違った特徴があります。会場では、認知症の人の脳で生じる変化などについても、MRIの画像を示しながら説明。さらに、認知症には最も多いとされるアルツハイマー型以外にも、脳血管性認知症やレビー小体型認知症などさまざまなタイプがあること、タイプによってはもの忘れ以外の症状が目立つこともあることなど、早期発見に役立つ情報がたくさん盛り込まれました。(4:52)
ー クリップ 3 認知症の診断 VSRAD ー
認知症は、問診、認知機能テスト、画像検査の結果などをもとに総合的に診断します。中でも病歴、生活歴、症状などを聞き取る「問診」は有力な情報になります。また近年、画像検査の進歩は目覚ましく、とくに脳の血流の状態を調べるSPECTでは、血流が滞っている箇所を特定できるため、認知症の原因疾患までわかるようになってきています。こうした診断方法に加え、埼玉県ではMRI画像を使った「VSRAD」という解析手法が普及しつつあります。VSRADを使うと、初期の軽い脳の委縮までわかるので、早期診断につながる有力なツールとして期待されています。(3:53)
ー クリップ 4 認知症の治療 新薬と漢方薬 ー
認知症の治療は抗認知症薬を使う薬物療法が中心になります。2011年からは新薬も含めた4種類の薬が使えるようになり、治療の選択肢が広がりました。ただし副作用が生じることもあるため、経過を見ながら適切な薬を使用していくことが大事です。薬で認知症を完全に治すことはできませんが、早い段階から適切な治療やケアを開始することで病気の進行を抑えられるようになっています。さらに「感情表現が豊かになる」「意思表示がはっきりする」「自発性や周囲への関心が高まる」といった効果が期待でき、長い期間安定した状態を保つことが可能になりました。また近年は、周辺症状の有力な治療法のひとつとして漢方薬を使う機会が増え、イライラや不安、不眠などの精神症状を抑える効果が期待されています。(5:17)
ー クリップ 5 ケーススタディ パーソンセンタード ケア ー
介護の現場では、本人の気持ちを想像し、希望に沿って介護する「パーソンセンタードケア」が導入されるようになっています。事例を通して、パーソンセンタードケアの考え方を紹介しました。介護者が対応に苦慮する症状の代表例が「徘徊」と「もの盗られ妄想」です。松本さんは「なぜそのような行動をしたのか、本人の気持ちになって理由を考え、それに沿った対応をしてほしい」と話しました。一方宮田さんは、妻の徘徊に悩んだ自身の体験を交えながら、具体的なアドバイスをしてくれました。(6:29)
ー クリップ 6 介護はマラソン 男性介護者の心得 ー
フォーラムには男性も数多く参加しています。「介護は女性の役割」という時代は過ぎ、近年は妻や親の介護に奮闘する男性が増えてきていますが、男性は女性以上に頑張りすぎて共倒れになってしまう危険もあります。そこで宮田さんが自身の体験を交えながら、男性介護者ならではの注意点や、上手な介護の方法を紹介。介護をマラソンに例え、「長い距離を走りぬくために少し力を抜いて走ればいい」とアドバイスするとともに、「一生懸命生きる姿は、身近で見ている子どもの教育にもなった」と話しました。(4:56)
ー クリップ 7 地域とのかかわり 訪問医療とご近所の力 ー
認知症になっても、住み慣れた自宅で暮らしたいと望む人は少なくありません。認知症の人の訪問診療も実施している大場さんは「医療やケアといった支援は、本人を中心に行われるべき」と強調します。本人が主人公になれる自宅への訪問診療を行えば、生活の様子も同時にわかり、医療やケアに生かすことができる、と話しました。また、自宅での生活を続けるには、地域の協力も欠かせません。宮田さんは、近所の人に助けてもらいながら介護を乗り切った体験を紹介。松本さんは、こうした地域の力を誰もが利用できるようなシステム作りが必要だと訴えました。(4:41)
ー クリップ 8 埼玉からのメッセージ ー
フォーラムの最後に、3名のパネリストが会場のみなさんに向けてメッセージを送りました。大場さんは「新しい時代が始まろうとしている」と感じています。「認知症になってもその人らしい人生を送れるよう、医療、ケア、そして地域で支えていく。これを現実にしていくのは、人の力です」と続けました。松本さんは「自分が管理者をつとめる地域包括支援センターには求められていることがたくさんある」と再認識したといいます。宮田さんは「介護をしている人は自分のことも大切にしてほしい。医療、介護サービス、地域の3つで作るトライアングルの中に身を置けば、さまざまなことが解決すると思います」と話しました。(4:01)
【2013年2月20日公開】
出演者
大場 敏明(おおば・としあき)さん
医療法人アカシア会 理事長
クリニックふれあい早稲田 院長
千葉大学医学部卒。消化器・がん医療などを経て20年前より高齢者・認知症医療に従事。現在は訪問診療や介護事業所の運営にも取り組んでいる。
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松本 由美子(まつもと・ゆみこ)さん
浦和区中部圏域地域包括支援センター
サンビュー埼玉 管理者 主任介護支援専門員
埼玉県立衛生短期大学(現・埼玉県立大学)卒。看護師を経てサンビュー埼玉に勤務、その後在宅介護支援センターなどを経て2006年より現職。
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宮田 敏行(みやた・としゆき)さん
認知症の人と家族の会 埼玉県支部 副代表
2002年に妻が52歳でアルツハイマー病を発症、現在も在宅介護中。家族の会埼玉県支部発行の広報誌「ふれあい」編集委員。2012年より現職。
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