クリップ
概要
ー クリップ 1 出演者のみなさん 認知症とのかかわり ー
2013年10月、東京都江東区で認知症フォーラムが開催されました。今回は医療、介護、家族、地域で活躍する4名のパネリストが参加。フォーラムの冒頭、自己紹介を兼ねて自身と認知症とのかかわりについて語りました。地域の医療機関で働く認知症専門医の一宮洋介さんは、治療薬が増えてケアも充実するなど、認知症対策が進みつつあることを紹介。現場でケアに携わってきた福田幸子さんは「本人の気持ちに寄り添うことが大事」と強調します。一方、アルツハイマー型認知症を発症した夫の介護を続けてきた金子順子さんは、家族の苦しみを話しました。また認知症の人を地域で支える取り組みをスタートさせた稲葉博孝さんは、高齢化、孤立化する地域の現状を伝えました。(3:31)
ー クリップ 2 認知症の基礎知識 原因疾患 ー
認知症を早期発見には、日ごろからその症状や特徴を正しく理解しておくことが欠かせません。もの忘れは最も気づきやすい症状のひとつ。認知症のもの忘れは、年のせいによる自然なもの忘れとは違い、体験を丸ごと忘れてしまうといった特徴があり、日常生活にも支障をきたします。また会場ではMRIの画像を示しながら、認知症によって生じる脳の変化について解説。アルツハイマー型やレビー小体型、脳血管性、前頭側頭型など、認知症の原因疾患とその特徴を説明し、疾患ごとに症状が違うことも紹介しました。(4:35)
ー クリップ 3 認知症の診断と治療 ー
問診や認知機能テスト、画像など、認知症の検査と診断の手順を説明。認知症治療の核になる薬物治療の最新情報を紹介しました。治療薬は2011年に新しい薬が認可され、現在は4種類の薬が使えるようになっています。副作用が出た場合は薬を別のものに変えるなど、治療の選択肢が増えました。薬で認知症を完全に治すことはできませんが、早い段階から適切な治療やケアを開始することで病気の進行を抑えられるようになっています。さらに「感情表現が豊かになる」「意思表示がはっきりする」「自発性や周囲への関心が高まる」といった効果が期待でき、長い期間安定した状態を保つことが可能になりました。(4:57)
ー クリップ 4 認知症の症状 BPSD ー
認知症の症状には中核症状のほかにBPSD(周辺症状)があります。BPSDは徘徊や妄想、暴力など人によって現れ方には違いがあり、介護をする人は対応に苦慮することも少なくありません。近年は、体の状態や薬物治療による副作用など、さまざまな要因が引き金となってBPSDが現れるということがわかってきました。BPSDを改善するには、こうした要因を取り除くことが基本ですが、近年は安全性の高い漢方薬を利用して治療するケースも増えています。数ある漢方薬の中でも抑肝散はイライラや不眠といった神経症状を鎮める効果が高く、高齢者に活用できる漢方薬として期待されています。(5:03)
ー クリップ 5 パーソンセンタード・ケア ケーススタディ ー
介護の現場には「パーソンセンタードケア」という考え方が導入されつつあります。パーソンセンタードケアは、何を思い、何を希望しているのか、本人の立場に立って考え、それに沿ったケアを提供していこうというもの。フォーラムでは「徘徊」「もの盗られ妄想」の2つの事例を通して、パーソンセンタードケアを説明しました。福田さんは「行動には本人なりの理由がある。頭ごなしに否定せず、適切な対応をしてほしい」とアドバイスします。また、認知症ケアのポイントを6項目にまとめ、紹介しました。(4:35)
ー クリップ 6 地域で認知症を支える見守り活動 ー
一昔前のように地域のつながりが重視されなくなり、とりわけ東京は周囲との人間関係が希薄になっています。お互い無関心な状況の中で、認知症の人をどう支えていくかが今後の課題になるでしょう。地域で認知症の人を見守る活動を始めた稲葉さんを中心に、認知症になっても住み慣れた地域で生活し続けるための知恵を出し合いました。(4:23)
ー クリップ 7 東京・江東からのメッセージ ー
認知症は当事者や家族だけの問題ではなくなりました。医療、行政、地域などすべての人が協力し合い、ともに生きていくことが求められています。認知症フォーラムを終えるにあたり、参加したパネリストたちがメッセージを発信しました。稲葉さんは、認知症の人と根気強くコミュニケーションをとることを提案。金子さんは「以前よりもサポートは充実してきている。なるべく早く助けを求めてほしい」とアドバイスしました。福田さんは「すべての人が試行錯誤しながら、諦めることなくがんばっていくことが大事」と話しました。一宮さんも「認知症とともに生きる時代になっています。正しい理解を」と呼びかけました。(4:50)
【2014年3月6日公開】
出演者
一宮 洋介(いちみや・ようすけ)さん
順天堂東京江東高齢者医療センター副院長
順天堂大医学部卒。認知症患者の症状に合わせた治療を実践。介護家族を支援するグループ療法にも携わっている。
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福田 幸子(ふくだ・さちこ)さん
NPO法人「宅老所かがやき」代表理事
介護支援専門員。東京都足立区に開いた宅老所でデイケアと宿泊サービスを提供。利用者に寄り添った介護を追求している。
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金子 順子(かねこ・じゅんこ)さん
家族介護経験者
認知症の夫の在宅介護を経験。夫からの暴言や暴力に苦しんだ。一人で抱え込まず相談することの大切さを痛感している。
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稲葉 博孝(いなば・ひろたか)さん
東京都江東区・南砂住宅自治会事務局長
東京都民生児童委員。地域住民の連携強化に取り組み、独り暮らしの人や高齢者が安心して暮らせるよう見守り活動を続けている。
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